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【書評】ジェレミー・リフキン『限界費用ゼロ社会』をまとめてみた|資本主義経済の矛盾とIoT

 今回の書籍は、こちらです!

限界費用ゼロ社会―<モノのインターネット>と共有型経済の台頭

限界費用ゼロ社会―<モノのインターネット>と共有型経済の台頭

 

 こちらの書籍に関して書いていきますが、今回は下のような目次で行きたいと思います。

著者:ジェレミー・リフキンについて

まずは書籍に書いてある著者紹介を見てみます。

文明評論家。経済動向財団代表。欧州委員会、メルケル独首相をはじめ、世界各国の首脳・政府高官のアドバイザーを務めるほか、TIRコンサルティング・グループ代表として協働型コモンズのためのIoTインフラ造りに寄与する。ペンシルヴェニア大学ウォートンスクールの経営幹部教育プログラムの上級講師。 

この紹介から分かるように、彼は学者ではなく実務家です。つまり、経済学者というアカデミズムの立場からの視点ではなく、エコノミストという実業界からの視点であることを押さえておきましょう。 

本の概要 

 ここから本の概要について説明していきます。 

本書の目的

 本書の目的は、実際に新たなテクノロジーが用いられている事例を羅列することではありません。経済学の視点から、総体としてどのように世界が動いていくのかを考察することにポイントがあります。本書でも、

本書の目的は、〔中略〕資本主義時代に私たちが生きる拠り所としてきた核心的価値と私たちが築いた制度や機関が、この人間行動の変化によって時代遅れになってゆく経緯を吟味し、来るべき協働の時代を推し進める新しい価値観や制度、機関を探求する。(p.43)

とあります。つまり、従来の資本主義の興りに始まり、テクノロジーによる時代の変化、さらには新たな世界の在り方を議論することが本書の大筋となります。ですので、この記事でもその流れに沿って進めていきたいと思います。

これまでの資本主義

 従来の資本主義のキーワードは【中央集中】と【垂直統合】です。

中央集中

 これは、エネルギーや流通に関することです。化石燃料が活用されてから、それが採掘される場所で中央管理され、そこからエンドユーザーまで届けられる形となります。また、エネルギー生成や工業製品の生産も大型の発電所や向上が設けられ、そこを起点としてさまざまな地域へ輸送されることとなります。

 その理由は、第一に動力源である資源が採掘される場所に制限があることです。どこでも中央になれるわけではないので、それ以外の場所に資源のある場所から分配されます。第二に規模の経済があります。エネルギーや工業製品は、同じものを同じやり方で大量に生産することで効率化をはかることができます。そのため、各地で同じことをやるよりも一極集中で生産を行ったほうが効率的であるのです。

垂直統合

 垂直統合とは、サプライチェーンの上から下までを一括して管理することです。例えば、企業Xが製品Aを生産しているとします。そのために、材料Bや運送などが必要になってきます。しかし、それらの業務をそれぞれ別の企業が行っていると他企業に委託している業務は、企業Xにとって必ずしも効率的とは言えませんし、不確実性も増します。そこで、エネルギーから材料の調達まで全てを同じ企業が一括して管理して、生産の流れを効率化するという発想が生まれます。実際に現代でも、石油企業を始めとした少数の企業が世界で大きな力を持っていることが見て取れます。

資本主義の必要性

 こういった機能を形を実現するために、資本主義は大きな意味を持ちました。なぜなら、中央集中かつ垂直統合の形を実現するには莫大な先行投資が必要だからです。大きな事業案があったとしても資金が不足していれば実現できません。しかし、資本主義のおかげで、資金繰りをすることができ、莫大な資本の投下による大発展をこれまで遂げてきたのです。

テクノロジーの進歩

 こうした資本主義による発展の中で、新たなテクノロジーが発明されてきました。それが日本でも近年話題になる、IoT(Internet of Things)3Dプリンティング再生可能エネルギーなどといったものです。これらの流れから【インダストリー4.0】や【第4次産業革命】といった言葉も大きく扱われるようになりました。

IoT(Internet of Things)

 IoTとはInternet of Thingsの略であり、あらゆるものがインターネットに繋がることを意味します。これにより、さまざまなものをリアルタイムで追跡し把握することができるようになるので、あらゆるものの効率化に用いられることが期待されています。例えば、工業では生産の用いている機械の様子をリアルタイムで監視しているので、故障する前に取り替え、作業を止める時間を最小限にすることができます。これは他の機器からも同様に集めたビッグデータから故障の兆候を確認し予測することが出来るからです。また、消費者サイドから見ると、どの店舗にどの商品がいくつあるかまで事前に把握することができるようになります。あらゆるものの情報が瞬時に集まるので、効率化に大きく利用できる可能性を秘めています

3Dプリンティング

 3Dプリンティングは開発当初、初期のコンピュータのように一般消費者には手の届かないものでした。しかし、徐々に低価格で利用することが可能となり、一般化する可能性が大いにあります。

 これに伴う変化が主に2つ挙げられています。1つ目がマス・プロダクション(大量生産)からマスによるプロダクション(大衆による生産)への変化です。これまでは同じものを同じ方法でたくさん作ることが効率的でした。しかし、3Dプリンティングでは、どのような形であっても生産コストはほとんど変わりません。そのため、多品種少量生産が可能となります。さらに、生産手段を一部の資本家のみならず大衆も持つことができるので、先ほどの中央集中とは大きく変わります。実際にソフトウェアがオープンソースとなれば、誰にでも容易に使えるものとなります。

 2つ目は、資源の効率的な利用にあります。これまでは、資源を削り成形していくのが主流でした。そのため、その際に出てくる余分な箇所は無駄になってしまいます。しかし、3Dプリンティングでは、削るのではなく足していく方法で、必要な形を作り上げていくので無駄がほとんどありません。さらにプリンティングに使われる原料ですが、砂やプラスチックなどありふれた資源からの生成の技術が模索されていて、これが実現されれば大きなブレイクスルーとなります。

再生可能エネルギー

 これは、化石燃料には頼らない再生可能なエネルギーのことです。太陽光発電や風力発電が挙げられます。これまで、エネルギーの変換効率が悪く、また設置コストも高いため批判も多くあるが、本書では固定価格買取制度などによる奨励もあり、技術向上とコスト削減が見込め、いずれ主流になると考えています。

 これらは、インターネットや3Dプリンティングを動作させるエネルギーとして必ず必要な点です。

資本主義の矛盾

 この段階に来ると、資本主義の矛盾が見えてくるといいます。なぜなら限界費用がほとんどゼロになるからです。例えば、書籍の電子化によって書籍を追加的に1冊生産するコストを考えてみればよいでしょう。デジタルデータであるのでコピーにかかる費用はほとんどかからない(1冊分のデータをダウンロードするのに必要なインターネットへのアクセス料のみ)はずです。また、生産物に関しても3Dプリンティングによってかなり低コストとなります。ほとんど限界費用の掛からない電力を使って動かし、ほとんど限界費用のない資源から生成するのであれば、新たに1つの生産物を生産するためにコストが掛かりません。

 このような状況では投資が回収しづらくなります。なぜなら、経済学の大前提である希少性が潤沢さに取って代わられるからです。限界費用がゼロということは、費用なしに生産することができることを意味します。つまり、価格が下落していくので、市場では価格がつかなくなるのです。よって、資本を回すことで成長してきた資本主義経済は極限まで効率化を図ると機能しなくなるという矛盾を抱えていることが浮き彫りになってきます

 また、現在の成長の指標としてGDPが用いられているが、この上昇も期待できなくなる。なぜならGDPとは追加的な生産価値の総計(or 最終財の価値の総計)であるが、価格としてその価値が反映されなくなるので、もはやGDPという指標と私たちの生活の豊かさが一致しなくなる。

協働型コモンズの効能

 そこで、資本主義の次の形として、共有型経済を挙げている。この効能について以下3点からまとめます。

協働

 これは、従来の経済学で想定される個人主義的な個人とは異なり、他者との協働が想定された世界観です。IoTのプラットフォームにより機器のみならず人々を結びつけ、グローバルな規模によって社会関係資本を形成することを可能とします。これにより、私有財産としての所有からアクセスへの変化も見込まれます。例えば、自動車においては、自分の車を所有するよりもカーシェアリングサービスが台頭してきています。これも所有ではなくコミュニティ内における共有を意図するものと考えられます。こうすることで、資源を有効活用することができ、従来の大量生産/大量消費と比べても無駄のない生活を実現できます。

水平

 水平は先程の垂直的な資本主義の特徴と真逆です。つまり、トップダウンのサプライチェーンのではなく、協働型コモンズがそれぞれ独自の価値を生み出していくのです。しかし、これらはIoTによって結びついているので、多様性が確保され、共有されます。

分散

 分散は中央集中と対になる特徴です。

 3DプリンティングとIoTプラットフォームによって誰もが生産者になることができます。これまで情報に関してはSNSやブログの台頭により、誰もが発信者になれるという変化はあったが、情報にとどまりません。生産すら誰もが行える社会が到来するのです。つまり、誰もが生産者であり、消費者でもあるので、本書では生産消費者(プロシューマー:producer + consumer)と表現されます

 これにより従来必要であった中央から末端への輸送網も必要性が薄くなります。なぜなら各々が自らで生産をすることができるからです。そのため、輸送にかかる資源コストの削減にもなるのです。

個人的なコメント

 私自身、この本を読んでかなり夢が広がりました。この資本主義社会に飛び込み、新社会人として働いていくことに絶望しか感じていませんでしたが、この本のおかげで4月から仕事をすることに少し希望を見出せました(たまたまこれに関与できそうな仕事でよかったです)。

 もちろん、実現可能性の議論などもあると思いますが、著者紹介のところにもあったように、アカデミズムの書籍ではないとしていますので、予め【夢を見させてくれる本】としてコメントしていきたいと思います。

GDPを越えた目標

 現在はGDPが主たる生活水準の指標です。アベノミクスでも、GDPを如何に改善していくかが重要な争点です。しかし、これでは補足できない大切な価値(人権など非経済的価値)があるとして、人間開発指数(HDI)なども考案されています。

 しかしやはり、資本主義経済であるかぎり、経済を低迷させる場合は現状を維持できないと批判されますし、自分自身もそうなのかもしれないと思っていました。

 ここで、本書は私にブレイクスルーを与えてくれました。資本主義経済の次の段階に移行するのであれば、現在の生活を維持するために経済を無理やり回す必要もなくなっていくわけです。GDPというよくわからない数字ではなく、私たち自身の生活に向き合って社会を考えていける日が来るのかもしれませんね。そんな期待を持たせてくれました。

労働からの解法?

 IT化が進む中でシステムやロボットに労働が奪われるとマイナスに言われることが多々あります。しかし理想を言えば、人間は一切労働をする必要がなく、必要な財やサービスは全て機械が生産してくるのであればそれでいいと思います。つまり、ここで問題なのは人間が労働できないことではありません。必要な財やサービスを受ける手段(=賃金)を失うことにあるはずです。よって、労働がなくても、生きるのに必要な物が享受できるのであれば問題ないと考えます

 私自身、働くこと自体に価値を見いだせるタイプの人間ではないので、労働は自分の善の構想を実現するための手段であり、妥協でしかないと考えています。ですので、常にあわよくば働かずに生きる道に逃げ込みたいと思っています。

 そこで、この限界費用ゼロ社会では、所謂労働をせずとも生きていける可能性を示唆していると思います。これらのテクノロジーを使いこなし自分で必要な物を揃えることが可能となるからです。こう考えた時には、期待に夢が膨らむばかりでした。

まとめ

 期待するとはいっても、待っていても瞬時にそんな世界が実現するわけでもありません。しかも、これが実現可能なのかは現在誰にもわかりません。

 さて、ここまで本のまとめとコメントをしてきましたが、どうでしたか。疲れましたよね。少しでも興味を持っていただければ、ぜひお近くの図書館で借りてみてください(特に労働に希望を持ちたい方、おすすめです)。

 また、感想等ありましたら、コメントよろしくお願いします。今回はちゃんと更新していきたいと思いますので、これからも読んでいただけたら嬉しいです。